劇場版『名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)』を観に行ったので感想記事をupしようと思いつつ気がつけば結構な時間が経ってしまい……あらすじを追ったレビュー記事はもはや書けそうもないんですが、今回の映画で改めて毛利蘭ちゃんの「正ヒロイン」としてのポジションに危機感を感じてしまった次第なので、そこんとこの課題点にも言及しつつ、感想記事に代えさせて頂きたい所存です。
ヒロイン・毛利蘭に足りないもの
えーまず私自身、コナンのストーリーとしてはちょうど灰原哀ちゃんとコナン君がバスジャックに遭遇したあたりで記憶が止まってるんで、今回の『純黒』はかなり展開が進んでおり面喰ってはいるのですが、そのころでさえ灰原哀ちゃんの存在が蘭ちゃんの正ヒロインとしての地位を脅かしがちな印象だったのが、さらに状況は深刻なものになっていることを実感せざるを得ませんでしたね。
いや別に蘭ちゃんの出番が少なすぎるとか、存在が空気だとか、キャラが劣化したとか、そういうことを言ってるのではありません。
そもそもコナンという作品自体、主に毛利家とコナンが行きずりの事件に巻き込まれる基本バージョンの他、少年探偵団が活躍する事件編、服部との共闘編、怪盗キッド編、そして黒の組織の核心に迫る回など、バリエーション豊富な群像劇風なのがウリだったりするわけで、今回の映画ではたまたま「黒の組織VS公安とFBIの共闘」ということで、どうしても蘭ちゃんの出番は削られてしまうのは展開上、仕方ありません。むしろヒロインだからといって出ずっぱりじゃなくっても一向に構わないとさえ個人的には思っております。
ただ私が問題にしているのは、今回の蘭ちゃんの「ヒロインらしからぬふるまい」そのものにあります。
…さて話はいったん逸れますが、では逆に「ヒロインらしい行動原理」って何だと思いますか?
ここで気を付けてほしいのは「ヒロイン要素」ではなく、あくまで「行動原理」です(逆に「要素」として語るなら蘭ちゃんは充分、正ヒロインの資質を兼ね備えてると思っております)
もっというと、「アクション映画におけるヒロインのヒロインたるべき行動パターン」には一定の法則があるのをお気づきでしょうか。
まず私が考えるアクション映画ヒロインの行動原理として
・まわりの忠告を聞かず事態を悪化させる
・およそ建設的思考を持ち合わせておらず自分の感情最優先!
・好奇心旺盛で何でも首を突っ込みがち
・敵側を浄化させる
・自らの危険を顧みない
・どれだけ自分が庇護されているか気づこうとしない
・自らの能力を過信し前線に出たがる
これがヒロインの行動原理なら、まあ普通は真っ先に死にそうですよね。
だけどそんなヒロインがきちんと無事でいられるのは、ひとえに「守られるべき存在」だからなんですよね(スパイダーマンのヒロインは死んでしまいましたけど…)
つまりヒロインが出しゃばらなければそこそこにイージーモードだったのを、敢えてハードな展開にすることでアクション映画のハラハラ感を高める役割として一役担うというのがヒロインの存在意義であるとすら思ってます。
…というわけで。
蘭ちゃんはどうだったでしょうか。
まさしく崩れゆく遊園地内で新一の存在を確信するも、新一の忠告に従い、取りもあえず避難に努めます。その聞き分けの良さは思わず友人の園子が「お人よし過ぎる」と呆れるほどです。
しかし限られた時間と人海戦術でギリギリの駆け引きをしていたコナン側からすれば、ここで蘭ちゃんがアクション映画のヒロインよろしく出しゃばって前線に向かおうものなら、やはり護らないわけにはいかず、とするとさらなる惨事を招いたかもしれないことは想像に難くありません。
あくまで恋人である新一を信頼し、決して我を通さず感情的にならない、可愛い顔して芯の強い彼女の献身ぶりと賢明さに、キャラとしての好感度も急上昇です。
だけどヒロインとしてどうかと言われれば…やはり「ヒロインらしからぬ」と言わざるを得ませんね。
他キャラのヒロイン度を比較考察
さて、ではここで蘭ちゃん以外の純黒登場キャラについて少し振り返ってみるとします。
まずはやはりこの人…
本命:灰原哀(シェリー)
序盤はコナンと共に、暴走しがちな少年探偵団の子供たちの保護者的な役割として冷静かつ理性的な行動を取っていましたが、キュラソーが黒の組織の関係者かもしれないと感じた途端、徐々に余裕をなくし、普段の彼女らしからぬ感情的な振る舞いを取るようになります。
そんな弱気な彼女を鼓舞し、庇おうとするコナンとの掛け合いはヒロイン的です。
自分の能力を過信したり、好奇心から出しゃばったりすることはなかったものの、黒の組織への異常な恐怖心から冷静さを欠き、まわりを感情で振り回してしまったところなんかは蘭ちゃんには見られなかったヒロイン的振る舞いではありました。
総合ヒロイン度:☆☆☆☆
困ったちゃん度:☆☆
護られ度:☆☆☆☆
対抗:安室透(バーボン)
黒の組織メンバーにして、その正体は公安のエリートであり、コナンとも顔見知りの関係。
そして本来ならば協力体制にあるはずのFBIメンバー・赤井とは因縁の仲…というより一方的に私怨がある様子?!
事件の先々で赤井と顔を合わせるたび、ヤリ手の公安エリートらしからぬ、感情をむき出しにして突っかかっていきます。
一般人の命までかかった有事の際にも、観覧車の上で赤井との決着を迫るという、某サイヤ人の王子も真っ青な好戦っぷり。
聞き分けのいい蘭ちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいほどには「困ったちゃん」ヒロインっぷりを魅せつけました。
総合ヒロイン度:☆☆☆
困ったちゃん度:☆☆☆☆☆
護られ度:☆☆☆☆
大穴:小嶋元太
露出が少なすぎて公式サイトからの画像を拾うのに苦労しました…
(元太ファンの方、画像小さくてすみません)
純粋で好奇心旺盛、だからこそ危険な目に遭いやすく、コナン含め周りの大人たちはハラハラし通しです。
だけど天真爛漫な彼の所作に癒される関係者もまた少なくはなく…
間接的にとはいえコナン及びバーボンたちノックを救ったのは元太の無邪気な友情力と浄化力によるものでした。
敵からも愛され守られるというまさにヒロイン気質な元太。
足手まといなくせに好奇心だけは人一倍強く、好き放題に振る舞って周りを掻きまわし足を引っ張りまくる、まさに観ていてイライラするアクション映画ヒロインを地で行ってましたねー。
総合ヒロイン度:☆☆
困ったちゃん度:☆☆☆☆
護られ度:☆☆☆☆☆☆
浄化度:☆☆☆☆☆☆
なお上記以外にアクション映画ヒロインたる大事なポイントを挙げるとするならば、ずばり徹底して「蚊帳の外」であることだと個人的には思っております。
例えば事件の裏側をヒロインだけがまったく知らされていなかったり、主人公の正体をヒロインだけが知らなかったりなど…それはひとえに愛しきヒロインを危険に晒したくないからという周囲の配慮からなのですが、もしかしたらそうしたことによる疎外感がヒロインを無茶な行動に走らせてしまうのかもしれません。
要するに何が言いたいかというと、毛利蘭が「ヒロイン」として挽回要素があるとするならば、コレに尽きるのではないかということです。
逆に灰原哀(シェリー)の場合、蘭ちゃんとは比べ物にならないくらいコナン君とは重大な秘密を共有しています。
場合によってはコナンの正体を蘭ちゃんに悟らせないための芝居にも協力を惜しみません。
というわけで、他の要素でどれほど蘭ちゃんよりヒロイン度をリードしていても、危険を伴う「秘密の共有者」である以上、「蚊帳の外」状態の蘭ちゃんには敵わないということです。
なお、安室透(バーボン)に関しては、こいつ自身がコナンや灰原以上に複数の顔を持つミステリアスキャラなのですが、灰原・コナンの関係と違う点は、コナンの方が安室の「裏の顔」を熟知しているのに対し、安室の方はコナンの正体を知らないという、「互いに秘密を共有」というよりはイニシアチブ的にやや「コナン→安室」という一方的矢印の関係である点です。
ちなみにコナン・赤井が秘密の共有者同士であるのに対し、安室は両名から頑なに「蚊帳の外」として重大な秘密を箝口されております。こちらも安室が戦力外だからというよりはひとえに彼を慮ってのものです。そしてそれゆえ赤井は安室から執拗に敵視されることとなるのですが、敢えてその誤解を解こうとせず、自分に向けられる敵意をまるごと受け止めようとします。
前述した「どれだけ自分が庇護されているか気づこうとしない」ヒロインの特性だけで語るとするならば例の「観覧車バトル」がまさに言わずもがなですね。
うーん…こうしてみると安室さんもなかなか手ごわいんですが、やはり「蚊帳の外」ヒロイン度合でいえば蘭ちゃんに軍配が上がるものだと思ってます。安室の場合、「それ」が発動するのはあくまで赤井絡み限定ですからね。対して蘭ちゃんの外堀は灰原さんをはじめ、服部平次に怪盗キッド、アガサ博士もかな?あらゆるコナンとの秘密共有者が何とかして蘭ちゃんを危険に巻き込むまいと全力で秘密を保持すべく奔走するのです。
となると、「蚊帳の外」ヒロインとして最も蘭ちゃんに対抗しうるのは元太?!
「浄化力」も蘭ちゃんと互角で張り合えそうなのは他でもない元太ですしね![]()

……えー、とはいえ冷静になって考えればいくら蘭ちゃんが今回の映画でヒロインとして圧倒的に物足りなかったとはいえ、他の3名を見て頂く限り蘭ちゃんさえ本気になれば充分巻き返せるヒロイン争いの構図であるとは思ってます。
負けないで…蘭ちゃん!
