※ネタバレあり注意
ていうか最近の少年漫画アニメにおける29歳ってもう「おじさんキャラ」じゃないんだね。はるか昔は、17歳の工藤新一や蘭ちゃんすら「大人」だと思ってたんだけど…そんな私のような読者ファンもいつしか立派なアラサーとなり、イントロの「体は子供。頭脳は大人!」みたいな煽りすら「いやいや17歳はまだお子様でしょー」とツッコむようになってしまった今日この頃…(ちなみに映画版では「頭脳は普通」の煽りにマイナーチェンジされてるのは我々大人ファンへの配慮なのかしら
)

しかしながら、少なくとも私世代の少年漫画アニメで10代後半オーバーって、もうどちらかというと大人ポジのイメージ…もしくは10代後半~20代のキャラがメイン張るような作品はちょっと「大人向けの絵柄」だったりして(ろくでなしブルースとかシティハンターとかスラムダンクとかあーいう系統ね)、かつて『るろうに剣心』(古くてスミマセン)の主人公・緋村剣心が幕末の志士だったという設定上やむを得ず(?)27歳という年齢だったことについては作中でしつこいくらいイジられた上、飛天御剣流の使い手は見た目が若いという設定まであつらわれ、27歳キャラという「拭えないアダルト感」を必死で取り繕っていた印象がすごくあったりします。
今の風潮的にどうなんですかね。
少年漫画キャラの29歳はおじさんではなくまだまだ現役??
いやーでも今回正直、番宣の段階では安室さん推されすぎてて逆に萎え気味だったんですよね。純黒くらいの距離感がちょうどよかったんで。どうっせコナン&安室さんのタッグで推理と痛快アクション格好よくこなす感じのアレでしょみたいな、まあ斜に構えてたんですよ。いい意味で裏切られました!!!おんなじ風に思ってしまってる方、ぜひ見に行って欲しい!!!
今回の安室さんは、公安警察という最高権力側にあって、真実を捻じ曲げてでも「日本を護る」という大義のために、あまねく権限を行使し正義を執行するという、「真実はいつもひとつ」が信条のコナンとは相対する存在として立ちふさがるその展開に血沸き肉踊りましたねー。
何の非もない善良な一般市民である小五郎のおっちゃんが、ある日突然一方的にテロの容疑者に仕立て上げられ起訴に追い込まれる……自分たちの正義を執行するためなら民間人の人生を犠牲にすることも良しとするその傲慢さに怒りを感じずにはいられず…っていうか蘭ちゃんがホント可哀想すぎて…
じゃじゃ馬感満載だった前回(純黒)に比べ、アダルティでダーティな29歳・安室さんに私は鼻息荒く「公権力駆使しまくって民間弱者の人権を踏みにじってくるオトナってヤダ汚ーい
」…とまあ、今回の安室さん(29)はこーいう役どころなのねと、もう本当色々と興奮が抑えきれず…。

普通に最初からコナンとのタッグで推理戦に臨むっていうのでも充分ストーリーとして盛り上がる映画になったとは思うのですが、ミステリものとしては勿論のこと、検察vs公安警察の確執、そして各々の正義と私怨が交錯しぶつかり合う描写も見事で、社会派ドラマとしても成り立ってるあたり、コナン映画らしからぬというか、もうコレ完全に大人向けだよねって感は否めず…だからこそ、いつもならコナンの世界観にうまく溶け込んでる阿笠博士のトンデモ発明品の存在が若干浮きぎみでした。
アッでも私は今作、ある意味一番かっこよかったのは阿笠博士だと思ってます!捜査の「合法性」とやらにこだわってた降谷&風見の公安ペアでしたが、阿笠博士with少年探偵団はそんな次元をとっくに突き抜けた、どこ吹く風の非合法捜査オンパレードですからね。まあ民間だからできることなんでしょうけど、変声期とかキック力強化シューズとかもはや反則すぎなんで(笑)
ところでこうした「いくつもの正義」が交錯する構成だと「誰の正義」が一番共感できてしまうか、みたいなことを考えてしまうのですが…公安検察官として登場した日下部さんの「正義観」はリアルだったというかまあ、一番分かりやすく、受け入れやすく、そして最も万人が陥りやすい類のものだった気はします。
自分たち公安検察が公安警察に対し常に忖度を強いられ、正義の執行もままならないという現状、そして自分の協力者でもあった羽場が警察公安の傲慢さにより間接的に「殺された」ということで日下部さんの復讐心は一気に燃え上がります。
倒すべきはあくまでも公安警察であり、たとえ計画の遂行に不自然な点が生じても民間の犠牲は出さないと徹底していたあたりに日下部さんの正義観が垣間見えます。まあ犯人のそうした正義観すらも安室さん側に看破されていたのかどうかは不明ですが、小五郎の無実を証明するために妙なタイミングでIotテロを起こさざるを得ず、それを皮切りに犯人特定までの道筋を与えてしまったのだから、皮肉にも安室さんによる小五郎を犯人に仕立て上げる計画は大きく功を奏したわけです。
余談ですが日下部さんテロは、6年前の2012年に起きた片山容疑者のサイバーテロ事件を連想させられました。アレもたしか動機が捜査機関を出し抜くことで国家権力への怒りを晴らすといった類のものだったのですが、捜査側はまんまと翻弄させられて冤罪逮捕にまで至ります。いみじくも「犯人側の正義」は執行されたわけです。人が人を裁くことの重みを考えさせられる事件でした。
誰しもは一度は抱く「強大な権力」に対しての怒りと不信感。その押さえつけられた閉塞感を打ち破るために自分が出来ることは何か…
サイバーテロこそが、公安警察の権威を失墜させ自分たちの正義を取り戻す執行手段だと信じて疑わなかった日下部氏の動機は、犯行自体は唾棄すべきものであるとはいえ、民間人である私にとって充分に共感し得る正義であり、その一方で、自らを正当化する言葉を一切口の端にも上らせず、結果に対し弁明も釈明もせず、ただひたすら日本を護るべく奔走する、悲しいほど私心に囚われない降谷零の執行する正義はあまりに分かりにく過ぎて、私などは後半の後半までずっと権力の権化である安室さんを憎んでましたからね。まあそれが今回の作品の狙いでもあるのでしょうが、見事にミスリードされてしまってました。
ミスリードといえば橘鏡子弁護士。最初から怪しげな雰囲気を醸し出してましたが、登場シーンのテロップが橘鏡子(29)だったので、エッ29歳?安室さんと同じ歳!!!…てなわけで何か警察学校時代に同期として安室さんとはただならぬ因縁があるのかとずっと勘ぐってましたからね。あれもまさかミスリードの一貫??橘女史の29歳に反応してミスリード食らったのはきっと私だけじゃない…はず…!!!
日下部氏が怪しいと気づかせられる最初の分かりやすいヒントとしては恐らく火事未遂のシーンでウォーターサーバーがチラっと映るシーンだと思うのですが(「お水で消火できるじゃーん」っていうね)、あの時ですら私は橘鏡子(29)にこだわって日下部さんのことを疑えなかったですからね。むしろ上層部に過剰な憤りを抱く正義の人として、最終的にはコナンたちと共闘する側の人になるんかなとずっと信じてましたから。私の見る目のなさよ…![]()
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えと…
ところで今回「腐」目線としてはどうだったのか。
毎度すみません。
やっぱりね…これはハズせないんですよね。
◆コナン×安室さん
安コorコ安どっちでもいいんですけど、個人的にはコ安推しなんですよねー。とはいえ、今回赤井ィィィィが不在につき、若干安室さん総受感は薄かったですかね。
赤井の前では我を失い好戦的になる安室さんも今回ばかりは民間人を護る立場であり部下を統率するする立場でもあり、私心を排除した非の打ちどころのないキャラに仕上がってたんで。いやでもだからこその危うさというか…赤井がいない分、安室さんと対等な立場でサポートができるのはコナンくんだけだからね。赤井の分まで御守よろしく頼むよォ結構ああ見えて彼、向う見ずなところがあるからさァ…てことでのコ安。
ちな目暮警部の前で繰り広げられた「無邪気で好奇心旺盛な小学1年生のコナンくん」vs「警察の仕組みが分からずうっかり差し入れを持ってきた29歳フリーターの安室さん」を演じる茶番劇が可愛すぎてコ安尊い。ホンマ何の茶番や。
◆風見さん×降谷さん
降風と思わせての風降派。ていうか風見さん何かとツメが甘いんだよね。で今回は降谷さんにめちゃ叱られる。風見さんションボリ。
や、でも風見さんはね、よくやってるんですよ。どこか得体のしれない上司である降谷さんに畏怖しつつもその私心なき正義の理解者であろうとし、懸命に尽くす姿が健気で…
風見さんはエリートではあるけど奇才ではない。だから日本を護るという自身の責務についてはよく自覚していても「僕の恋人はこの国だ」と断言する降谷さんの「正義」を超越した「愛する者(国)へ尽くす気持ち」までは理解が及ばない。風見さんをひたむきに腹心のパートナーと信じて疑わない降谷さんと、降谷さんに畏敬の念を払いつつもどこか一線を越えられない風見さんっていう風降。いやそれだと降風じゃね?って思われるかもだけど精神面で関係性の主導権を握ってるのが風見さんってことでの風降。
ちょ…コレまた私の語彙力が回復したらまた語りたいんですが今はこれが限界だー!
◆蘭×園子
えへへ。実は私がコナン作品の中でイチ押しな組み合わせがこの2人だったり…歴史が長いので語りだすと文字数がアレなんですが、今回も可愛かったーーー。
相変わらず新一への評価は辛辣な園子ちゃんと、健気に新一を信じて待つ蘭ちゃんの掛け合いがね、可愛いんや…
好みとしては蘭園なんですよねー。蘭ちゃんの方が色々と達観してるので。小五郎と英理さんがいい感じになった時の園子ちゃんの反応が面白い。そういえば小五郎が無実の罪を着せられ蘭ちゃんが憔悴しきってる間、ずっと園子ちゃん、蘭ちゃんのそばについててあげてるんだもんね。だからこそ爆発テロにも一緒に巻き込まれちゃうんだけど。
◆コナン×哀ちゃん
黒の組織の存在がなかったためか哀ちゃんヒロイン化とはならず、純黒のような情緒不安定に陥ることもなくひたすら頼もしい影の女房役だった感じ。
哀ちゃんがバーボンとしての安室さんに怯えちゃうからか、今回はほぼ哀ちゃんに一連のいきさつについて説明を省いてた様子なのはコナンくんなりの哀ちゃんへの配慮かな。蘭ちゃんに関しては甘えもあるのか結構無神経な対応をしちゃうコナンくんだけど、哀ちゃんにはすごく繊細に気遣いしてあげられてるのは、哀ちゃんがコナンくんにとって男女の仲を超えた大切な協力者(そして秘密の共有者)というのがあるからかな。情にほだされた哀ちゃんがコナンくんにほのかな恋心を抱いても、それは叶わぬ恋なのですよね…
哀ちゃんが懸命にコナンくんを遠隔でサポートしてる時にコナンくんは安室さんとノロケ合いしてるんだもんね(例の「恋人」のくだりね)切ない……コ哀尊い。
えとえとこんな感じでネタバレ感想以上です!
最後まで読んでくれた方、どうもありがとう!!!