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Channel: ゆめかたつの曲解的漫画考
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【少年ジャンププラス】黒バス番外『洛山編』を読んで―黒子最後の宿敵・黛千尋について語る

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くろこんにちわ
yukuです。

WC激戦を経て、敗北を知ったキセキの世代たちの「その後」を学校別に描いた黒バス番外編もついに先週、黒子の最後の対戦校でもありキセキの世代キャプテンでもある赤司擁する洛山高校編を迎えました

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まずは「もう一人の赤司」になったことでこれまで名前呼びしていた他のレギュラー陣への対応はどうなるのか…っていう疑問についてはサクっと回収されてたので一安心です^^

つまりあくまで名前呼びの赤司は二重人格症状ではなく「主将としての使い分けにすぎなかった」ということで通すようですね。

ところで私は作中キャラ内でも黛さんが5本指に入るくらい好きなキャラなのですが、このたびの「洛山編」、そんな私の中でもかなり満足のいく終わり方だったように思います。

特に「卒業まであとはそっとしておいてくれ」の理由が何とも黛さんらしくて、等身大といった感じで、赤司じゃないですが思わず「クス…」ってなっちゃいました。

思えば黒子のバスケという作品は、キセキの世代などというカラフルで華やかで人間離れしたプレイはもとより、キャラ的にも濃くて、およそ等身大とは遠い奴らといった印象でした。

特に主人公である黒子・火神の最初の敵として立ちふさがったキセキの世代・黄瀬涼太は登場の仕方からして、他校にも関わらずモデルという肩書きゆえ女子たちの黄色い声を浴びまくるわ、彼のサインを求める女子たちに長蛇の列を作らせるわ、誠凛バスケ部では入部早々のミニゲームでエース候補となりうる実力を見せた火神を一瞬で模倣しワンオンワンで瞬殺するわで、その強烈なインパクトは今後の黒バスのストーリーに大きな影響を与えたであろうことは自明です。

黄瀬と初めて対峙した火神の「さらにこんな奴らがあと4人も…」という心の声には恐らくバスケの実力以外にもいろんな意味合いが含まれてそうだなと当時コミックスを読んで感じたりもしました。

さて何が言いたいのかというとつまり『黒子のバスケ』という作品を読み切った上で振り返るに、主人公・黒子テツヤにとっての「最初の敵」が黄瀬涼太であるならば「最後の敵」は間違いなく黛千尋であり(まあこれに関しては諸説あるでしょうが)初登場時の黄瀬が等身大には程遠い華やかでインパクトの強い敵キャラであるのに対し、黛はどこまでもイマドキ10代等身大の、ラノベ好きでどこか人生悟ってて人並みには自尊心も持ち合わせてたりするけど自分の「身の程」はわきまえてたりする、いわゆる少年漫画の敵キャラとしてはあまりに淡々と地味な人物像だったりするのが含蓄深いと思ったりしてます。

これは深読みしすぎかもしれないですが、そんな部分に黒バス作者である藤巻先生の「ニクイ演出」みたいなものを勝手に感じたりしてます。

当初はキセキの世代と同じ中学で仲間だったにも関わらず自ら決別を果たし打倒に燃える黒子のキャラこそが「等身大」であり、凡才ながらにして自分の「薄い」特質を存分に活かしキセキの世代という「勝ち」を決定づけられてる存在のような天才プレイヤーたちに挑む様が痛快だったりしたわけです。

が、誠凛メンバーとの絆を経て黒子は変わっていきます。

それまでは、相棒にして「真の光」でもあった火神でさえも黒子にとってはキセキの世代を倒し自分のバスケを認めさせたかったがために利用していたに過ぎず、誠凛のを日本一にするという目標もまた黒子にとっては「キセキの世代への復讐」に過ぎませんでした。

しかし、真の光とともにに挑んだバスケは青峰に全く通用せず壁にぶち当たりもがいていた黒子に親身なアドバイスをくれた先輩、温かく見守って待ってくれるチームメイトたち、そして何よりワンマンだった火神が自分を信じてくれていたことで、黒子は考えを改めます。

その瞬間こそ黒子テツヤが「天才たち(キセキの世代)を見返すことに夢を見る凡才少年」から「ライバルと切磋琢磨しながら仲間とともに勝利を目指す少年漫画主人公」となった節目であり、「等身大」からは少しかけ離れた存在となってしまうんですよね。

そのことを少し寂しく思ってしまったりする私のような凡人読者にとって黛千尋の存在はまさに「第二の等身大的存在」であり、短い間でしたがWC決勝戦では「黛千尋の物語」から目が離せませんでした。

黒子の策略にまんまと嵌り「影」としての用途を為さなくなってしまった黛への赤司の処遇、そしてどこまでも凡人ゆえ「影」に徹しきられなかった黛を黒子と比較し「覚悟の重さ」を語る黄瀬に対し、納得しつつもどこか苦々しい思いを禁じ得ませんでした。

黛千尋にとって洛山バスケ部に青春を捧げた最後の1年とは…天才的司令塔である赤司の駒と成るべく大好きなラノベをゆっくり読むはずだった時間を苦しい練習に割き、得たものとはなんだったのか…

「(チームに)愛着もねえしな」という理由で引退式には出なかった黛さん。

黒子と対戦した敵はみなそれぞれ最終的にはチームとの絆を深めなどして成長していった中、黛さんはどこまでも黛さんで、そういう部分もまた、一番最初に敗北を味わわされたキセキの世代であるがゆえに恐らく作中もっとも心身ともに成長を遂げた敵キャラである黄瀬と対照的であるとも言えます。

漫画だから…といってしまえばそれまでなのですが、主人公の黒子が相棒・火神や誠凛メンバー全員とただならぬ強固な絆を築いていったのには「いやいやまだ出会って一年足らずだよ?」と感じずにはいられなかったりする私のような捻くれた読者にとって、黛さんの「(1年間で)特に素敵な思い出があったわけでもなし」と最後までチームに愛着を見せなかった振る舞いの方が共感できたりしました。

そしてだからこそ黛さんの「最後の1年は悪くなかったよ」と赤司にデレたこのセリフの破壊力は凄まじく、素直に感動しました。

黒子にとって「変容してしまった赤司(僕司)」というのはある意味、中学時代の彼から「楽しいバスケ」を奪ってしまった張本人であり袂を別つべき相手でもあったのでしょうが、黛にとって赤司とは精彩に欠いた自分の高校生活に彩りを与えてくれた恩人ともいえる存在であったりするのですよね。

そんな赤司と黛の奇妙ともいえる関係がこのたびの黛からの赤司への感謝の言葉として描かれていたのが今回の番外編の見どころでもありました。

主人公・黒子テツヤの最後の宿敵として黛千尋というキャラはこれまでの「好敵手」に比べるとあまりにも控えめで因縁も薄い感じですが、数々の激戦を経て成長を遂げた「元」等身大的主人公・黒子に立ち塞がる合わせ鏡的好敵手キャラという意味合いではまさに極上のラストライバルだったように思います。







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