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Channel: ゆめかたつの曲解的漫画考
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小野寺小咲と黄瀬涼太に見る「やられ役」の美学について考察

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■報われないがゆえに愛しい―不遇属性を背負うキャラに見る「敗者の美学」
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5人目の鍵の持ち主も現れ、なお熾烈を極めるニセコイのヒロイン争い―

本来ならば楽とは両想いであるはずの小野寺さんは、その健気さと愛らしさで、なみいるヒロイン候補を押し退け圧倒的不動の支持を得ているにもかかわらず、何かと不遇な立場に置かれ、そのことがまた我々読者をやきもきさせるのですが…はたして小野寺さんENDの可能性は見込めるのか。

思い入れのあるキャラだからこそ、報われてほしい!

実際、正ヒロインの千棘にターンを持って行かれっぱなしで小野寺さんの負け試合が続く展開に、「ゴリラ(千棘)ENDではなく小野寺ENDを…!」という小野寺クラスタの声は高まる一方です。

しかし私は批判を受けること覚悟で声を大にしていいたい。

「小野寺さんは報われないのがイイんじゃないか!」と。

まあ、好きなキャラには幸せになってほしい、その気持ちは私にも理解できます。
しかし一方で、決して報われることのないその不遇属性にこそ、尊さを感じてしまう私がいたりします。

というわけでここでは私が少年ジャンプ作品の中で、熱い視線を送りつつも「敗者の美学」を貫いて欲しいと願う2人のキャラについて語っていきたいと思います。

■敗北からの成長がアツい!ワンマンプレイヤー黄瀬が「チームのために」戦える選手になるまで
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「百戦百勝」がスローガンだった帝光中時代には試合で負けなしだった黄瀬は、誠凛との練習試合で生まれて初めて試合での「負け」を経験します。

「敗北」に免疫のなかった黄瀬は衆目を顧みずただただ無心に涙を流すのですが、主将である笠松の言葉で、黒子たちへのリベンジを誓います。

そして同時に、「また一緒にバスケがしたい」という望みをかけてかつてのチームメイトでもある黒子に会いに行った黄瀬が、「君たちキセキの世代を倒します」という黒子の宣戦布告を正面から受け止めるのです。

黒子や青峰などとは違い、バスケ経験も浅く途中入部だった黄瀬にとってかつてのチームメイトは、「相対すべき存在」というよりかはどこか「背中を追うべき存在」だったのかもしれないと思うと、彼らとの対決は、黄瀬自身がその背中を追うことをやめ、「かつてのチームメイトとの決別」を決意した瞬間でもあったわけです。

そしてやがては海常エースとして、自分のチームを勝たせるための闘い方を模索しだすようになるのです。

かつて黒子がくれた「チームで大事なのは自分が何をすべきか考えることです」という言葉の意味を、それこそチームがバラバラになり黒子が姿を消してからもずっと黄瀬なりに考え続け、IH準々決勝での青峰との対戦時、その答えを導き出したシーンは感無量でした。

青峰に「チームメイトに頼った弱さ」を指摘されるも、「敗因があるとすれば(仲間を頼ったことではなく)まだ力が及ばなかっただけっス」と言い切り、最後の最後まで試合をあきらめずボールに食らいついて行った黄瀬の姿にかつての「勝敗だけにこだわる」面影はありません。

そういえば余談ですがこの試合のあとに掲載されたコミックスのイラストコーナーにて、作者の藤巻先生が「黄瀬にも勝たせてやりたいと思いながら描いてました」というコメントがなされていたのが印象的でした。

黄瀬といえば初登場時は自分の認めた相手以外には平気で見下す態度を取ったり、イケメンモデルだったり、バスケ始めるまでは「なんでもすぐにできちゃって毎日がつまらない」などとおよそ凡人には共感しがたい悩みを抱えていたりとまあいわゆる「鼻につく奴」という印象のキャラだったのですが、それだけにこの敗北から成長する姿は好感度がグンと上がる要素大なのでした。

結局、この青峰戦での敗北のみならずその後のWC準決勝誠凛戦では待望のリベンジ戦であったにも関わらず、オーバーワークによる負傷でベストコンディションとは程遠い状態で挑むことになり、善戦したものの今一歩及ばずまたしても黄瀬は敗北を味わわされることとなるのです。

が、この準決勝試合で黄瀬は敗北の悔しさと引き換えに、「仲間に頼ること」を学び、かつて自分たちキセキの世代のバスケに失望し姿を消した黒子から「最高の選手です、海常の黄瀬君は」と言わしめるまで成長を果たすのです。

■ハッピーエンドは目の前なのに…!紙一重で報われない小野寺回の「寸止め感」がたまらない!
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ずっと片思いだった一条楽に千棘という美人で明るい彼女がいると聞かされ、その恋をあきらめていたところ、実は2人は偽恋だったと知り、自分の気持ちをいつか伝えたいと奮闘する小野寺さん。

基本的に恥ずかしがり屋さんなのですが、親友でもあるるりちゃんの後押しもあり、時に結構大胆なカタチで楽にアプローチをかけていきます。

本来ならば楽自身も小野寺さんが好きであるという「両想い」な関係のため、気持ちさえ伝えられれば恋は成就したも同然という状況にもかかわらず、なぜかいつもすれ違います。

もはや恋愛の神様に見放されているとしか思えないこの仕打ち。

小野寺さん自身はとても健気で頑張り屋さんなだけに、いつも紙一重で報われないこの展開には切歯扼腕せざるを得ません。

なお、クリスマス・バレンタイン・ホワイトデーなどの恋愛イベントでは悉く正ヒロインの千棘にターンを奪われ、ならばせめて誕生日くらいは小野寺さんターンがあるかと一縷の望みをかけて待ち望んだ結果も見事スルーという、どこまでも不遇な扱いを受ける小野寺さん…作者は何か小野寺さんに恨みでもあるのかというこの仕打ちには小野寺クラスタじゃなくても同情を禁じ得ません。

そんな小野寺さんへの判官贔屓の気持ちが、逆に優遇されまくっているゴリラこと正ヒロイン千棘への不満へと繋がり、千棘「ゴリ押し」疑惑に発展するわけです。
昨今の人気投票での小野寺フィーバーはそうした読者ファンの「小野寺さんをもっと優遇してあげて!」という気持ちの表れだったのかもしれません。

作品内では優遇されまくっている正ヒロイン千棘を大きく引き離し、見事堂々の1位でしたからね。

この結果は編集サイドも無視できるものではないでしょう。ようやく我々読者の小野寺さんENDを願う熱い想いが報われるべき時が来た!もしかしたら正ヒロイン交代だって夢じゃないかもです!

―などと息巻いてはみたものの…

小野寺さん不遇脱却には大きな障害があったりします。

それは、楽と小野寺さんがもともと実は両思いであるという設定上、小野寺さんが報われる展開イコールニセコイの物語が即収束につながってしまうということです。

つまり皮肉なことに小野寺さんは楽の本命という、一番優位な立場にいながら物語的都合上、紙一重ですれ違わざるを得ない宿命を背負っているというわけです。まさに悲哀のヒロインですね。

届きそうで届かない、幸せをつかめそうでつかめない―
小野寺さんの幸せを願う読者としてはもどかしくて仕方がない一方で、その「寸止め」感がたまらなかったりもするのです。

■まとめ
小野寺小咲と黄瀬涼太、2人のキャラに共通するのは、「物語の一番最初に登場した敵キャラである」という点です。

少年ジャンプ「ライバルキャラの法則」に当てはめると、一番最初に出てくる敵=カマセルートというのはお約束ですが、最初の敵だからこそ、もっとも長く彼らの成長を見守っている分、肩入れしてしまうというのはあります。初期キャラってことで愛着もひとしおですしね。

「いつか彼(彼女)らのひたむきな努力が報われてほしい」と願うその一方で、どこまでも不遇な「やられ役」としての部分にどうしようもなく愛しさを感じてしまったりもするわけです。

◎小野寺小咲◎
『ニセコイ』に登場する激マブ女子にして正ヒロインの恋敵。
一条楽に思いを寄せる。
実は楽とは両思いなのだがお互いそのことに気づいていない。
恥ずかしがり屋さんだが、時として大胆な行動に走る。
意外と抜けたところもあって愛嬌も抜群♡♡
友達思いでもある。

◎黄瀬涼太◎
『黒子のバスケ』に登場する主人公の強力なライバル。
10人に1人と呼ばれる天才が5人同時に存在した「キセキの世代」の1人でもあり、「進化する天才」とも呼ばれるオールラウンダー。
人懐っこい反面、自分の認めた相手以外にはあからさまに見下した態度をとったりする。


▼今回の記事を書くにあたって参考にさせていただきました

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